元メジャーリーガーで現ヤクルトスワローズ監督・高津臣吾が、自身の代名詞であるシンカーについて、その握り方・投げ方・変化の意識を詳細に語ります。野村克也監督や古田敦也捕手と共に試行錯誤を重ねながら進化させた技術、そして横投げ投手が縦の変化を操る難しさと価値についても実体験をもとに深く掘り下げています。
- 1. シンカーの握りと投げ方の原理 00:00
- 中指を軸にした独特の握りと放し方
- 潮崎投手との違いと横回転の意識
- 2. シンカー完成までの試行錯誤と指導の影響 04:10
- 野村監督からの課題と投げ込みによる習得
- チェンジアップ的な速度差で前で打たせる戦略
- 3. 投球術と配球パターンの深み 08:03
- コース・速度を変えて複数のシンカーを使い分け
- 外角低めの活用と長打リスクへの配慮
- 4. 横投げ投手が縦変化を投げる難しさと価値 11:00
- フォークのような縦変化の習得が困難な理由
- 手首・指の使い方の細やかな工夫
- 5. 潮崎とのシンカー談義と振り返り 13:54
- 焼き鳥屋での“みかんを使った”即席講義
- 現役時代の研究と努力、監督としての今
シンカーの握りと投げ方の原理 00:00
中指を軸にした独特の握りと放し方
高津氏はシンカーを「中指にかけて人差し指を外す」独特の握り方で投げており、抜くというよりも中指で押し込んで回転を与えるイメージを持っていたと説明します。早いシンカーと遅いシンカーでは指のかけ方を変えていたとのことです。
潮崎投手との違いと横回転の意識
潮崎投手は縫い目でしっかり挟んで回転をかけるのに対し、高津氏は「挟みは浅く、中指でこすり落とす」方法で変化を生み出していたといいます。投球の回転軸を「真横に」することで変化量を安定させていた点も強調されています。
シンカー完成までの試行錯誤と指導の影響 04:10
野村監督からの課題と投げ込みによる習得
プロ2年目の秋、野村監督から「潮崎のようなシンカーは投げられないのか」と言われたのを機に、毎日100球のシンカー投げ込みを敢行。遠投やキャッチボールでも回転を意識し、試行錯誤の末に「横回転による沈み」を掴んでいったと振り返ります。
チェンジアップ的な速度差で前で打たせる戦略
高津氏のシンカーは鋭く曲がるというより、「速さの緩急」でタイミングを外し、前で打たせるボールだったといいます。緩い進化を使って外野の頭を越されないよう、細かく速度とコースをコントロールしていたと述べています。
投球術と配球パターンの深み 08:03
コース・速度を変えて複数のシンカーを使い分け
配球では「同じシンカーでも速度とコースを使い分けて何種類にもなる」と語ります。古田捕手と共に「このバッターには外の緩いシンカーでショートゴロを狙う」など、詳細な戦略を日々の対話と実践で蓄積していったといいます。
外角低めの活用と長打リスクへの配慮
特に右バッターに対してインローのシンカーは空振りも取れるが長打リスクもあるため、外角低めへの投球を増やし、ゴロ打たせを徹底していたとのことです。「被害を最小限に抑える」投球を意識していたことが語られています。
横投げ投手が縦変化を投げる難しさと価値 11:00
フォークのような縦変化の習得が困難な理由
横投げ投手は縦変化の変化球が非常に難しく、変化量や角度の調整に苦しむケースが多いといいます。チェンジアップやフォークを自在に操るには、かなりの技術と工夫が必要であると述べています。
手首・指の使い方の細やかな工夫
中指にスピンをかけ、小指側からボールを離す意識が重要だと語られており、回転軸の作り方や角度を微調整するための細やかな感覚が不可欠であることが伝わります。
潮崎とのシンカー談義と振り返り 13:54
即席講義
かつて潮崎投手と焼き鳥屋で「みかんに縫い目を描いて握りを披露し合った」という逸話が披露され、和やかな中にもシンカーへの探究心が垣間見えます。「お互いの投げ方をその場で見せ合った」というエピソードは、当時のリアルな試行錯誤を象徴しています。
現役時代の研究と努力、監督としての今
現役時代は「同じ球でも常に工夫を重ね、完成したと思ったことは一度もなかった」と振り返ります。監督となった今でも、過去の経験を活かして選手の成長を支えたいという姿勢が見られました。
この動画から学べること
- 中指で操作するシンカーの構造と横回転の理論
- 変化量よりも速度差とコースの使い分けで打たせる戦術
- 横投げで縦変化を習得するための工夫と価値
- 指導者や捕手との共同研究で磨かれる投球術
- 「完成」は存在せず、進化し続ける意識が大切
シンカーを武器にしたいピッチャーだけでなく、「変化球のバリエーションを活かした投球術」を学びたい全ての野球選手にとって、非常に示唆に富む内容となっています。
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